土の健康のバロメーター「ミミズ」

ミミズは、古くは「自然の鋤」、近年では「生態系の技術者」等と称されてきました。

進化論の父として有名なイングランドの生物学者チャールズ・ダーウィンは、自著でミミズを「地球にとって最も価値ある動物」と褒め称えたくらいです。

体長数㎜から2mを超えるものまで、現在約7000種見つかっているそうですが、ミミズは農業にどのように貢献してくれるのでしょうか?

ダーウィンは一八八一年、『ミミズの活動による腐植の形成』を出版した。その中でダーウィンは書いている。「土の歴史のなかで、こんなに大きな働きをしている下等動物がほかにいるかどうかは疑わしい。」

エアハルト・ヘニッヒ, 生きている土壌 腐植と熟土の生成と働き, 日本有機農業研究会, 2009

ミミズ糞は黄金の土

横山和成, 図解でよくわかる土壌微生物のきほん, 誠文堂新光社, 2015

ミミズの生態系と食べ物

ミミズの生態系は、住む場所によって「堆肥生息型」「枯葉生息型」「表層土生息型」「下層土生息型」の4つに分類されます。

堆肥生息型は堆肥を食べ、枯葉生息型は枯葉を食べます。

表層土生息型や下層土生息型のミミズは、土とともに枯葉などの植物質、菌類や細菌などの微生物、トビムシなどの小動物やその糞も食べています。

特に好まれるのは、腐りかけたタマネギ、ミカン、ポレー、果物のくず、コーヒーの出し殻などだそうです。

ミミズの働き

ミミズは、土壌内で「食べる」「動き回る」「糞と尿を出す」活動を行っていますが、この活動が土壌に大きな影響を及ぼします。

「食べる」ことが与える影響

ミミズは枯葉などの植物質や生ごみなどの有機物とともに、土中や有機物に付いた微生物も一緒に吞み込みます。

呑み込まれたものは尿素、塩類、酵素などの作用を受けながら土粒子で攪拌され、細かくなります。

その時、植物の根が吸収しにくい固定型リン酸やカリウムを吸収しやすい形に変換したり、ビタミン類を合成したりもします。

そのため、ミミズの体内は、有機物や無機物を物理・化学的に変化させる優秀な工場といえるでしょう。

「動き回る」ことが与える影響

ミミズが土の表面や土中を動き回ることによって、表面にある有機物と土が攪拌混合され、土中に孔がたくさんできます。

穴の数は、1㎡あたり800本、全長180mにも及ぶとされています。地上に通じた縦横に走る孔によって、土の通気性や保水性が向上します。

さらに、孔の壁はミミズの体液で塗り込められているため、水分、炭素、窒素、リン酸などの量が増え、土壌微生物の格好の繫殖場になります。

それらの栄養を求めて作物根も伸びてくるので、ミミズ孔は様々な生物の世界を支えています。

「糞」が与える影響

ミミズが出した糞は、作物の生長に必要な栄養を多く含み、さらに根が吸収しやすい形になっています。窒素は3倍に増え、腐植酸量(腐植物質の集合体)は14倍に高まります。

多様なアミノ酸や酵素などに加えて微生物も多く含むため、ミミズ糞は「黄金の土」「糞から作られた腐植」とも言われています。

ミミズの養殖

ミミズはニワトリのエサにもなるので、中世ではすでに養殖が行われていました。方法はいたって簡単で、まず浅い穴を掘り、ワラ、有機物、米ぬか、土を層状に埋めていくだけです。短期間に驚くほどのミミズが発生します。

最後に

ミミズは腐熟していない糞尿や厩肥が撒かれると、その場を離れます。

また、化成肥料や殺虫剤などの化学物質はミミズを一掃します。すでにミミズが死に絶えた耕地もあるようなので、ミミズを最大限活用しようと思うと、有機・無農薬栽培一択になってしまいますね。

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