連作はしていいのか悪いのか、どっちなんだい!

同じ畑で同じ種類、同じ科の植物の栽培を繰り返すことを連作といいます。

一般的に、連作をすると土壌の養分などに偏りが生じ、虫がつきやすくなったり病気が出やすくなったりして生育不良(連作障害)が生じるので、連作はよくないとされています。

連作障害を避けるために、その対策として畑を分割して、例えば今年A区画にナス科を植えたら来年はB区画にナス科を植え、A区画にはイネ科を植えるなど輪作をしたり、土壌消毒を行うことが有効とされてきました。

一方で、ウリ科のキュウリを何十年も同じ畑で作り続けて、高品質&高収量を達成するキュウリ農家さんもいます。

連作はした方がいいのか悪いのか、もしするならどういった対策を取ればいいのでしょうか?

農学博士(東京大学)・篤農家の木嶋利男さんが書かれた本がとても参考になりました。

本書では連作によって生じる現象と連作の有効性、連作障害の対策技術等について解説しました。また、連作を実践し、成功している生産者の例も挙げました。みなさんが家庭菜園を楽しむための一助になれば幸いです。

木嶋利男, 連作でよく育つ野菜づくり, 家の光協会, 2021

連作が農作物に与える影響

連作で品質が向上する野菜

まず、連作した方がよい野菜があります。それは、サツマイモ、カボチャ、タマネギ、ニンジン、ダイコンなどです。

ニンジンは、連作すると肌がきれいになります。ニンジンの細根などを分解する微生物が増えるからです。そのため、ニンジンは同じ畝の同じ場所に種をまくとよいでしょう。

タマネギは、連作を続けると根が深くまで伸びるので、水分と養分を効率よく集められ玉の太りもよくなります。

連作の影響がない野菜

トウモロコシ、ムギ類、カブ、アスパラガス、トウガラシ、レンコン、クワイなどは連作の影響があまりないようです。

連作障害が起きやすい野菜

連作障害が起きやすい野菜は、育てる間隔をあけた方がよいとされています。

あけたい年数の間隔は、ホウレンソウ、レタスなどは1年、キュウリ、キャベツなどは2年、ソラマメ、インゲンなどは3年、トマトやナスなどは4~5年が目安です。

連作障害が発生する3つの条件

連作障害が発生するには、3つの条件があります。それは、

  • 主因:原因となる病害虫
  • 誘因:病害虫が繁殖しやすい環境
  • 素因:野菜の抵抗力のなさ

です。この主因、誘因、素因の3つがそろったときに、連作障害が発生します。逆にこの3つがそろわないと連作障害が発生しません。

例えば、畑に病害虫がいたとしても、病害虫が繁殖しにくい環境が整備されていたり、野菜の抵抗力があれば、連作障害は発生しません。

ですから、連作障害の予防方法は、主因、誘因、素因によってそれぞれ異なります。

連作障害予防方法その1:病害虫を抑える

残渣をすき込む(すべての野菜に有効)

収穫後の茎や葉(残渣)を刻んで乾燥させ、すき込むと微生物が効率的に働き、残渣をスムーズに分解していきます。そして、やがて腐植が形成されます。

不思議なことに、葉や茎についている「葉面微生物」は根など地中部分の分解を得意で、根にいる「根圏微生物」は葉や茎を分解するのが得意です。

このように、根、葉、茎を分解する微生物はそれぞれ異なっているので、残渣をすき込むことによって微生物が多様化し、特定の病原菌が繁殖することを防ぐことにもつながります。

米ぬかをすき込む(多くの野菜)

米ぬかをすき込むと、野菜に無害な線虫が増えます。そして、ネコブセンチュウやネグサレセンチュウなど、悪玉線虫が増えるのを抑制します。

米ぬかはタンパク質やでんぷん、ミネラルなどの栄養分が豊富なので、畑にすき込むと米ぬかを好む乳酸菌が急激に増えます。その後、乳酸菌を好む野菜に無害な線虫が増加します。

米ぬかを大量にすき込むと、微生物や線虫の活動が活発化しますが、1か月ほどで落ち着きます。その後、野菜の栽培を始めるとよいでしょう。

アブラナ科野菜をすき込む(ナス科、ウリ科)

カラシナやダイコン、ブロッコリーなどのアブラナ科野菜は、独特の辛味や鼻を刺激する香りを持っています。

この成分(イソチオシアネート)は、揮発性で強い殺菌・殺虫効果を持っているので、アブラナ科野菜の残渣を刻んですき込むと、連作障害の原因となる病原菌や悪玉線虫を減らすことができます。

秋冬にアブラナ科野菜を育て、収穫後に残渣をすき込み、その後春が来たらナス科やウリ科などの夏野菜を植えると、畑を無駄なく利用でき、連作障害を抑えることもできます。

カニ殻をすき込む(トマトやナス、キュウリなど)

ナスの半枯病、イチゴの萎黄病、ウリ科のつる割病やホウレンソウの萎ちょう病などは、フザリウムというキチン質に守られた病原菌によって発生します。

カニ殻をすき込むと、カニ殻に含まれるキチン質が大好物の放線菌がたくさん増えるので、放線菌がフザリウムのキチン質も分解し、フザリウムの数を減らすことができます。

その結果、萎ちょう病などを防ぐことができます。

コンパニオンプランツを利用する(ナス科、ウリ科など様々)

ナス科やウリ科の果菜類は連作障害が出やすいとされていますが、ネギの仲間は根から抗生物質を出すため、ネギ属と組み合わせることによって、連作障害を防ぐことができます。

ここで注目したいのが、それぞれの植物の根の深さです。トマトなど根を深く張る植物には同じような根域のニラを、比較的浅く広く伸ばすキュウリやスイカなどは長ネギを混植すると、連作障害を抑えるのに効果的です。

マルチで泥はねを防ぐ(トマトなど)

連作障害を引き起こす病原菌は、根ではなく「葉」から侵入するタイプもいます。病原菌が葉に侵入する主な方法は「泥はね」なので、マルチで土を覆ってあげることで病原菌が葉に付くことを防ぐことができます。

また、土に触れやすいところの葉をあらかじめ取り除くことも効果的です。

連作障害予防方法その2:環境を整える

病気株をすき込む

ちょっと勇気がいりますが、症状の激しい病気株を生のまますき込む方法があります。

そうすることによって、病原菌を餌にする微生物が一気に増え、土中の微生物が多様化するので、特定の病原菌がはびこることを防ぐことができます。

ワクチン接種の要領で、トマトの萎ちょう病、ウリ科のつる割病などを予防することができます。

しかし、アブラナ科の根こぶ病や軟腐病、ナスの青枯病などの病気株をすき込むと、かえって病害が増えてしまいますので、すき込むことは止めましょう。ウイルスが原因で引き起こされる病気にかかった株の場合も同様です。

雑草を生やす(エンドウ、ソラマメ、サトイモなど)

エンドウなどは、根から生育阻害物質を分泌することによって連作障害を引き起こすことが知られています。その対応策として、自然に生えてくる草と一緒に育てる、緑肥のエンバクをまくなどの方法が挙げられます。

これらの草は、エンドウが出す生育阻害物質を吸収したり、その物質を分解する微生物を増やす役割があるのではないかと考えられています。

エンドウとインゲンのリレー栽培(エンドウ)

エンドウもインゲンもともにマメ科です。一般的に、マメ科→マメ科の連作はタブーとされていますが、インゲンはエンドウとは代謝系が異なるので、エンドウが出す生育阻害物質の影響をあまり受けません。

なので、エンドウのあとにインゲンを栽培することができます。

また、エンドウは、生育途中はエンドウが出す生育阻害物質を分解する酵素を分泌するので、エンドウを栽培しているすぐ横に新しくエンドウの種をまくことによって、エンドウをエンドレスに栽培することも可能です。

ちなみに、エンドウが出す生育阻害物質はナスにとっては好影響なようで、エンドウ→ナス→エンドウ…の交互連作は可能であることが昔から知られており、実践されています。

雨よけ栽培で加湿を防ぐ(ホウレンソウ)

ホウレンソウの立枯病は、土壌にいる病原菌が雨などによって加湿状態でに活性化したときに発生します。立枯病を防ぐには、加湿状態を防げばよいため、雨よけを使ったトンネル栽培が効果的です。

その際両裾を上げておけば、トンネル内が高温加湿状態になることを防ぐことができ、ホウレンソウの夏どりも問題なく行うことができます。

連作障害予防方法その3:野菜を強くする

もみ殻くん炭をすき込む(アブラナ科、ヒユ科以外に有効)

もみ殻燻炭は、菌根菌にとってぴったりの住み家になります。菌根菌が植物の根に侵入すると、植物の抵抗性が上がり、病気に強くなります。

また、菌根菌は異なる植物の根をつなぐネットワークの機能を果たすので、植物同士での養分のやり取りを仲介したりします。

なお、アブラナ科やヒユ科(ホウレンソウやビートなど)の根に菌根菌は共生しないので、この効果は期待できません。

最後に

連作は一時的な現象です。連作を続けると、通常は3~4年で生育が悪くなります。ところが、そのまま続けると5年目あたりで連作障害が収まり生育が良くなります。

そして、6年目になると畑はその野菜が育ちやすい環境になりはじめ、連作障害が起こらなくなります。品質も向上します。

ある作物の栽培に特化して畑を整え、その作物が育ちやすい土壌や環境を作ることができれば、それを維持する方が管理もしやすく合理的です。

上記のような予防方法で連作障害を抑えつつ、土壌を植物が育ちやすい環境に整備していくことが植物にとっても人間にとってもよいのかもしれません。

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