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AIツールはBPRにつながるのか

承認を増やすDXと、仕事を減らすDXの違い

AIツールを入れれば、仕事は本当に軽くなるのでしょうか? 業務の流れを見直し、やめる作業・簡略化する作業・AIで補助する作業・人が確認する作業に分けて考えます。

複雑な業務フローを整理し、仕事の流れを軽くするBPRの抽象図

承認を増やすDXと、仕事を減らすDXの違い

AIツールを入れれば、仕事は本当に軽くなるのでしょうか?

文章を作る。
図解を作る。
会議メモをまとめる。
資料のたたき台を作る。

今は、そうした作業を助けてくれるAIツールが次々に出ています。どれも便利そうに見えます。実際に、助かる場面もたくさんあります。

ただ、ここで一度立ち止まって考えたいことがあります。

そのツールを入れたあと、私たちの仕事は本当に減るのでしょうか? それとも、確認、承認、入力、管理が増えるだけなのでしょうか?

AI道具箱では、AIツールを「すごいかどうか」だけでは見ません。見たいのは、その道具を入れたとき、仕事の流れが本当に軽くなるかどうかです。

結論:AIツールはBPRにつながる可能性がある

結論から言えば、AIツールはBPRにつながる可能性があります。

ただし、AIを入れること自体がBPRなのではありません。

BPRは、Business Process Re-engineeringの略です。少し硬い言葉ですが、ここでは難しく考えすぎなくてよいと思います。

この記事では、BPRを次のように捉えます。

今ある仕事の流れを見直し、不要な作業を減らし、必要な判断がしやすくなるように組み替えること。

つまり、先に見るべきなのはツールではありません。仕事の流れです。

今の作業の中に、やめてもよいものはないか。
少し簡単にできるものはないか。
AIに下書きや整理を任せられるものはないか。
最後に、人が責任を持って確認すべきところはどこか。

この順番で見ると、AIは「流行りの道具」ではなくなります。仕事を軽くするための、ひとつの選択肢になります。

AI導入で、仕事が軽くならないことがある

AIに限らず、新しいシステムやツールを入れたのに、なぜか仕事が軽くならないことがあります。

入力する画面が増える。
確認する項目が増える。
承認する人が増える。
報告資料が増える。
同じ内容を、別の場所にも転記する。

便利な仕組みを入れたはずなのに、現場の仕事は減っていない。むしろ、入力する場所と確認する人だけが増えている。

そんな経験はないでしょうか?

もちろん、確認や承認が必要な仕事はあります。

安全。
品質。
会計。
契約。
対外的な説明責任。

こうした部分を軽く見てよいわけではありません。

ただし、確認を増やすことと、仕事を軽くすることは別です。

新しい仕組みを入れた。管理側が見られる情報は増えた。でも、実際に作業する人の迷いや手間は減っていない。

この状態になると、現場から見れば「DXで仕事が楽になった」とは感じにくくなります。

誰かが悪いわけではありません。ひとつひとつの確認には、それぞれ理由があります。

けれど、それが積み重なると、現場の人には「また入力が増えた」と感じられることがあります。

だからこそ、AIを入れる前に考えたいのです。

そのAIは、仕事を減らすために入れるのでしょうか? それとも、今ある手順に、もうひとつ確認工程を足すだけになるのでしょうか?

DX VIEW

承認を増やすDXと、仕事を減らすDX

ここで、少し分けて考えてみます。

DXには、現場から見ると大きく2つの方向があります。

ひとつは、承認や確認を増やすDX。もうひとつは、仕事そのものを減らすDXです。

見方 承認を増やすDX 仕事を減らすDX
出発点 管理しやすくする 現場の作業を軽くする
起きやすいこと 入力、確認、承認が増える 不要な作業を減らす
情報の扱い 管理側の情報が増える 作業者が使える情報にする
現場の変化 手間が残る、または増える 迷いと重複作業が減る
AIの使い方 既存フローにAIを足す フローを見直してAIを置く
人の役割 確認者が増える 判断すべき箇所に集中する

承認を増やすDXが、すべて悪いわけではありません。組織として必要な確認はあります。記録を残すことも大切です。

ただ、そこだけが増えていくと、現場の仕事は軽くなりません。

仕事を減らすDXでは、まず不要な作業を見ます。

同じ情報を何度も入力していないか。
誰も使っていない資料を作っていないか。
毎回ゼロから考えているけれど、実は型にできる作業はないか。

AIツールを入れるのは、その後です。

BPR VIEW

AIを入れる前に、業務を4つに分ける

AIツールを選ぶ前に、まず作業を4つに分けてみます。

1つ目は、やめる作業。2つ目は、簡略化する作業。3つ目は、AIで補助する作業。4つ目は、人が確認する作業です。

01

やめる作業

最初に見るのは、AIで効率化する作業ではありません。そもそも、やめてもよい作業です。

誰も見ていない報告。目的が曖昧な記録。同じ内容の二重入力。毎回作っているけれど、判断に使われていない資料。

こうした作業は、AIで速くする前に、やめられないかを考えます。

02

簡略化する作業

次に見るのは、簡単にできる作業です。

毎回考えている見出し構成をテンプレートにする。公開前の確認項目をチェックリストにする。よく使う説明文を定型文にする。判断基準を先に決めておく。

AIを使う前に、型を作る。この順番は、地味ですが大切です。

03

AIで補助する作業

そのうえで、AIに任せられるところを見ます。

メモから構成案を作る。文章の下書きを作る。会議メモから論点を整理する。長い文章を短くする。SNS投稿文に変換する。表現を少しやわらかくする。

AIに途中まで手伝ってもらう。そのくらいに考えた方が、実務には合います。

04

人が確認する作業

最後に、人が確認すべき作業を残します。

事実関係。固有名詞。数字。価格。規約。制度。法律。関係者との合意。公開してよい内容かどうか。

AIを使うほど、人の確認が不要になるわけではありません。人が見るべき場所を絞ることが大切になります。

CASE 01

例:記事投稿や情報発信が続かない場合

たとえば、WordPress投稿が続かない場合を考えてみます。

これは、WordPressに限った話ではありません。日々の情報発信、活動報告、SNS投稿、ニュース記事の更新にも近い話です。

このとき、いきなり「どのAIライティングツールを使うか」から考えると、少し遠回りになるかもしれません。

先に見るべきなのは、投稿までの流れです。

  1. 01

    ネタを考える

  2. 02

    メモを書く

  3. 03

    構成を作る

  4. 04

    本文を書く

  5. 05

    画像を選ぶ

  6. 06

    WordPressに貼る

  7. 07

    見出しやリンクを整える

  8. 08

    公開前確認

  9. 09

    SNSに転用

こうして書き出してみると、投稿が続かない理由が少し見えてきます。

投稿が止まっている理由は、本文を書くことにあるのでしょうか? それとも、ネタ出し、画像選び、WordPressへの貼り付け、公開前確認のどこかで止まっているのでしょうか?

「記事を書くのが大変」と一言で言っても、実際にはいくつもの作業に分かれています。

この流れを、4つに分けてみます。

やめる作業は、毎回ゼロから構成を考えることかもしれません。記事の型を決めておけば、毎回悩む必要は少なくなります。

簡略化する作業は、見出し構成や公開前チェックです。テンプレートやチェックリストを用意すれば、迷いが減ります。

AIで補助する作業は、メモから構成案を作ることです。本文の下書きを作ることもできます。SNS投稿文に変換することもできます。

人が確認する作業は、事実関係です。固有名詞も確認が必要です。価格、制度、自分の経験とのズレも見ます。公開してよい内容かどうかも、人が判断します。

こうして見ると、AIを使う場所が少しはっきりします。

AIに記事を全部書かせる、という話ではありません。投稿までの流れの中で、どこを軽くできるかを見る。その中の一部を、AIに手伝ってもらう。

この方が、実務には向いています。

CASE 02

例:会議メモが次の行動につながらない場合

もうひとつ、会議メモの例を考えてみます。

会議メモを取る。議事録に整える。関係者に送る。でも結局、誰が何をするか分からない。

こういうこともあります。

AIを使えば、会議メモをきれいに要約することはできます。文章として読みやすい議事録を作ることもできます。

でも、議事録がきれいになっただけで、仕事が軽くなるとは限りません。

大事なのは、その後に動けることです。

決定事項は何か。
未決事項は何か。
誰が担当するのか。
期限はいつか。
次に確認すべきことは何か。
保留になった理由は何か。

実務では、きれいな文章よりも、次の行動が分かる整理の方が役に立つことがあります。

議事録はきれいになった。でも、次に誰が何をするかは曖昧なまま。

これでは、仕事が軽くなったとは言いにくいのではないでしょうか?

AIに任せるなら、単なる要約ではなく、次の行動につながる形で整理してもらう。ここにも、BPRの視点があります。

ChatGPTで十分な場合と、専用AIツールを使う意味がある場合

AI道具箱では、ChatGPTと専用AIツールの違いも見ていきます。

ChatGPTは、考える、整理する、下書きすることに強い道具です。

文章の構成案を作る。
メモを整理する。
比較表を作る。
メール文を整える。
チェックリストを作る。
業務フローを分解する。

こうした作業は、ChatGPTだけでも十分に試せることがあります。

一方で、専用AIツールには、専用ツールならではの良さがあります。

図解に強い。
音声入力に強い。
会議メモに強い。
特定の形式で出力しやすい。
他のツールと連携しやすい。
チームで同じ画面を使いやすい。

こうした場面では、専用ツールを使う意味があります。

ただし、専用ツールを使えば必ず仕事が軽くなる、というわけではありません。

ツールが増えれば、ログイン管理が増えます。料金管理も増えます。権限設定も必要になります。出力の確認も必要です。既存業務との二重管理が起きることもあります。

だからこそ、見るべきなのは機能の多さだけではありません。

そのツールを入れたことで、どの作業が減るのでしょうか?
どの確認が残るのでしょうか?
誰の負担が軽くなるのでしょうか?
逆に、どんな管理が増えるのでしょうか?

ここまで見て、ようやく「使う意味があるか」が見えてきます。

AI道具箱では、AIツールをBPR視点で見る

AI道具箱では、AIツールを単に紹介するだけではありません。仕事の流れの中で見ていきます。

今後、個別のAIツールを見るときも、次のような問いを大切にします。

このツールは、何の作業を軽くするのか。
その作業は、そもそも必要なのか。
ChatGPTで足りるのか。
専用ツールを使う意味はあるのか。
導入すると、確認や管理が増えないか。
人が判断すべき部分はどこに残るのか。
小さく試したとき、作業時間や迷いは減るのか。

AIツールは、便利なものが次々に出てきます。そのたびに、全部を追いかけるのは大変です。

だからこそ、最初に見る軸を決めておきたいと思います。

新しいかどうか。
話題になっているかどうか。
すごそうに見えるかどうか。

それだけではなく、仕事の流れが軽くなるかどうかを見る。

AI道具箱は、その視点で道具を試していきます。

まとめ:AIを入れる前に、仕事の流れを見る

AIツールは、BPRにつながる可能性があります。ただし、AIを入れるだけではBPRにはなりません。

先に見るべきなのは、業務の流れです。

今やっている作業の中に、やめられるものはないか。
少し簡単にできるものはないか。
AIに下書きや整理を任せられるものはないか。
人が責任を持って確認すべきところはどこか。

この4つに分けて考えると、AIを入れる場所が見えやすくなります。

AIは、仕事を置き換える魔法ではありません。でも、仕事の流れを見直したうえで使えば、現場の負担を少し軽くする道具にはなります。

まずは、ひとつの仕事の流れを書き出してみる。記事投稿でも、会議メモでも、日々の報告でもかまいません。

その中で、やめる作業、簡略化する作業、AIで補助する作業、人が確認する作業を分けてみる。

AI道具箱は、そこから始めていきます。