一月、炭を土に置くということ

この冬は、例年通り木炭や竹炭を少しずつ焼いています。もみ殻燻炭も合わせてつくり、出来上がったものから畑に運びます。 黒い炭を手でつかみ、ぱらりと表面に撒いたり、ところどころ浅く埋めたりしています。
本格的な作付けはまだ先ですが、春を待つあいだにできることとして、炭をどう扱うかを試しています。
混和か、表層かという問い
炭は土に混ぜるものなのでしょうか。 それとも、表面に置いておくものなのでしょうか。
撒いたあと、耕うん機を入れてしまえば早い、という考えが頭をよぎります。 せっかく用意した炭ですから、土と一体にした方がよいのではないか、と感じる瞬間もあります。
それでも、いまは全面的な混和はしていません。 あえて表層に置いたままにしています。
粘土質という前提条件
この畑は水田転換の粘土質です。 湿れば鍬にまとわりつき、乾けば表面に細かなひびが入ります。
試しに断面を切ると、上層5センチほどはややほぐれていますが、その下はやや締まり気味の層が現れます。 さらに掘り下げると、古い耕盤と思われるやや硬い層に当たります。
指で押すと形は保ちますが、軽く崩すと粘りをもって割れます。 水分が多い日は、断面が鈍く光ります。 乾いた日は、塊の縁が白っぽくなります。
団粒はできかけては崩れ、またできかける。 その途中段階にあるように感じています。
一般には、炭を混ぜれば空隙が増え、通気性や排水性が改善すると言われます。 炭と有機物が結びつき、微生物が入り込み、構造が形成されるという説明もあります。
ただ、この粘土質の断面を見ていると、いま強く攪拌することが適切かどうかは分かりません。 緑肥の根がつくり始めた細い通り道や、ミミズの通った跡を壊してしまう可能性もあるからです。
炭の効果以前に、土の層の状態という前提があります。
緑肥ゾーンと刈草ゾーンの違い
畑には大きく二つの区画があります。 緑肥を育てているゾーンと、刈草を重ねているゾーンです。
緑肥ゾーンでは、根が土の中に入り込み、地下で構造をつくっています。 地上部はまだ小さくても、地下では思っている以上に細根が分岐しています。
試しに株元をそっと掘ると、白い根が粘土の割れ目に沿って伸びています。 太い主根のまわりに、糸のような側根が広がり、ところどころで土を抱き込むようにしています。
ただ、まっすぐ深く入っていくわけではありません。 粘土の締まった層に当たると、根は一度止まり、向きを変えます。 押し返されるように横へ走り、やわらいだ隙間を探して再び潜っていきます。
指でその部分をほぐすと、根の先端がやや太くなっているのが分かります。 粘土に押されながら、少しずつ割れ目を広げているようにも見えます。 根と粘土が、静かにせめぎ合っている状態です。 その割れ目のそばに炭があれば、根はそこを足場にして、もう一段深く入り込めるのかもしれません。
根のまわりの土は、わずかにほぐれ、色も周囲と少し違います。 乾いた日でも、その部分だけはしっとりしていることがあります。 根圏のにおいは、刈草ゾーンの表層とはまた異なり、やや落ち着いた土の匂いがします。
刈り取ったあとも、根はすぐには消えません。 時間が経つと空洞になり、水や空気の通り道として残ります。 その空洞の内側に、細かな土の粒が付着しているのを見ると、粘土が少しずつほどけていく過程を感じます。
一方、刈草ゾーンでは、表層で分解が進みます。 雨のあとに土を少し掘ると、分解途中の草とともに、しっとりとした層が現れます。
同じ炭であっても、置かれる土の条件が異なれば、振る舞いも変わるのではないかと思います。
緑肥ゾーンでは、根の周囲という限定された空間で炭が作用する可能性があります。 刈草ゾーンでは、表面で炭と有機物がゆっくりと混ざり合い、団粒の核になるかもしれません。
この違いを見るためにも、いまは全面混和をしていません。
面で育てるという仮説
現時点での仮説は単純です。 この畑では、炭を面として扱う方が安定するのではないか、というものです。
木炭は粒が比較的大きく、ゆっくりと変化していきます。まずは表層に散布し、団粒の核になるかどうかを見ています。 竹炭は軽く割れやすいため、場所によっては浅く点状に埋めています。
もみ殻燻炭は細かく広がりやすいので、刈草ゾーンでは薄く面でなじませています。
いずれも全面的な混和はせず、土の動きに任せる形です。
根に探させる。 無理に近づけない。
耕さないのは、その変化を見るためです。
次の観察計画
もちろん、比較は行います。 一部の畝では炭を混ぜ、別の畝では混ぜずに置いておきます。
夏の乾き方はどう変わるか。 豪雨のあとの水の引き方はどうか。 緑肥や作物の根の入り方はどう違うか。
一年後、掘り返してみると何か違いが分かるかもしれません。 黒い粒がどこに留まり、団粒がどう変化しているのか。
炭は混ぜるべきか、置くべきか。
いまはまだ結論を出しません。 二月の畝に炭を置きながら、季節の移ろいとともに土がどう応えるのかを見ていきます。梅雨の長雨と真夏の乾きのあと、あらためて同じ断面を切るつもりです。
炭の置き方をどう整理するかについては、次の記録でまとめています。
▶ 続きの記録:『炭の置き方についての整理』



“一月、炭を土に置くということ” に対して1件のコメントがあります。