雪の二月、ドローンで圃場を立体化する ― 農業DXと3Dモデルの試行記録

ドローンで撮影した圃場全景。後の3Dモデル化の元データとなる動画の一場面。

二月は、畑に立つ時間がどうしても短くなります。 雨や雪が続き、土を踏み込むことも、草の匂いを確かめることもできない日が増える。

だからといって、農の思考まで止まるわけではありません。 今は外に出られない分、圃場を別の角度から眺めてみる時間にしています。

この冬は、ドローン空撮と3Dモデル化を組み合わせた農業DXの試行を記録しています。圃場管理や維持管理にどこまで応用できるのか、小さな検証を重ねている段階です。

農閑期に試す、農業DXという観察

この冬、ドローンで撮影した圃場動画をもとに、2.5Dや3Dモデルを作る実験を続けています。

目的は派手な可視化ではなく、「観察の精度を上げられるか」という一点です。

圃場全体を上空から撮影し、動画を静止画に分解する。 その画像群から特徴点を抽出し、点群を生成し、さらに立体モデルへと変換する。 言葉にすると工程は単純ですが、実際には地味な試行錯誤の連続です。

雪の残る畝、排水の跡、土色の濃淡。 普段は歩きながら感覚的に見ている情報が、別の形で立ち上がってきます。

2.5Dという中間的な視点

まず取り組んだのは、単一画像からの擬似立体化(いわゆる2.5D)です。 一枚の空撮写真から奥行きを推定し、起伏を再構成する方法です。

畝の盛り上がり、法面の角度、水の溜まりやすそうな低地。 完全な三次元ではありませんが、高低差の傾向を掴むには十分な情報が得られます。

ただし、単画像では限界もあります。 木立の裏側や建物の陰は推定に頼る部分が大きくなり、精度は安定しません。

それでも、平面図に等高線を書き足すような感覚で圃場を読み直すことができる。 2.5Dは、その補助線として機能します。

動画から3Dへ ― 点群という記録

次に試したのは、動画から複数枚の画像を抽出し、フォトグラメトリで3Dモデルを作る方法です。

動画を数百枚の静止画に分解し、 各画像の共通特徴点を照合し、 カメラ位置を推定し、 点群を生成する。

こうした三次元復元の技術(フォトグラメトリと呼ばれる分野の手法)を使えば、目では追いきれない位置関係まで推定できる。

複数画像から三次元形状を復元するこの方法は、土木分野や測量の世界では一般的ですが、圃場管理に応用する例はまだ多くありません。

農地の微地形や排水傾向を可視化できれば、経験に頼っていた判断を補助できる可能性があります。

最初に表示された点群は、無数の点が空間に浮かぶだけの粗い形でした。 しかし視点を回転させると、畝の列、畦の高さ、道路との段差が浮かび上がる。

地面のわずかな傾きが、思ったよりはっきりと見える。 これは、歩いているときには気づきにくい情報です。

3Dモデルにテクスチャを貼ると、写真を立体にしたような状態になります。

近年はGaussian Splattingのように、点の集合そのものを滑らかに表現する手法もあり、空間の密度感まで扱えるようになってきています。

動画から生成した点群データ。畝の高さや法面の傾きが立体的に把握できる。

点群データは一見すると無機質ですが、畝の連続性や微妙な沈下、土量の偏りなど、数値として扱える情報を含んでいます。

将来的には、この3Dデータを時系列で比較し、農地の変化を定量的に捉える仕組みへとつなげたいと考えています。 ここまでくると、排水が弱い箇所や崩れやすい法面について仮説を立てやすくなります。

高さの差分は意味を持つか

維持管理に使うのであれば、単発の3Dモデルでは足りません。 重要なのは差分です。

同じ高さ、同じ飛行経路、同じ条件で撮影し、 時間をおいて再度モデル化する。

その差を取れば、畝が崩れた場所、獣害で荒らされた箇所、土が流れた場所が浮かび上がる可能性があります。

もちろん、飛行高度がばらつけば精度は落ちます。 だからこそ、撮影プロトコルを固定する必要があります。 毎回同じ条件で記録することが、差分の意味を支えます。

点群と写真、その役割分担

今回の試行で感じたのは、点群は構造を見る道具だということです。

高さ、角度、体積。 定量的な情報を扱うには強い。

一方で、苔の色づきや土の質感、作物の葉色の変化など、生きものの情報を見るには写真テクスチャが必要です。

点群は骨格、写真は表情。 両方があって初めて、圃場の状態が立体的に理解できると感じました。

農業DXは目的ではなく補助線

圃場に立ち、土を握り、鍬を入れたときの抵抗を感じる。 それに代わるものはありません。

けれども、広い圃場全体を一望する視点は、人の目だけでは持ちにくい。 その不足を補う補助線として、ドローンと3Dモデルは機能するかもしれない。

派手な解析よりも、毎年同じ方法で積み重ねられる仕組みを優先したい。 技術は更新されますが、観察の蓄積は失われにくい。

冬の記録として

二月は外作業ができない分、圃場をデータとして触る時間が増えました。 雪の残る畝を立体で眺めながら、春になったらどこから手を入れるかを考える。

農業DXという言葉は大きいけれど、実際にやっていることは圃場を別の角度から見ているだけです。

それでも、視点が増えることは判断の幅を広げます。 外に出られない季節も、観察は止まりません。

Follow me!

雪の二月、ドローンで圃場を立体化する ― 農業DXと3Dモデルの試行記録” に対して1件のコメントがあります。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です