共感でつながるブランド作り
ディズニーランド、Apple、トヨタ、ルイ・ヴィトン…。世の中には、名前を聞いてパッとイメージが思い浮かぶ、さまざまなブランドがあります。
一方で、いいものなのに何故かまったく売れない商品もごまんとあります。
この違いは何なのでしょうか?売れていないものを売れるようにするためには、何が必要なのでしょうか?
その答えは、どうやら、ブランド作りにありそうです。
記事の目次
ブランドとは?

ブランドとは、もともとは「焼印」のことです。どら焼きにつけたり、牧場の牛の識別に使われたりします。しかし、近年では、「ブランド」という言葉はもう少し多くの意味を含んでいます。単純に名前や知名度だけではないような。
岩崎邦彦、小さな会社を強くするブランドづくりの教科書、日本経済新聞社、2013では、
- 弱いブランド=名前
- 普通ブランド=名前+品質
- 強いブランド=名前+品質+意味(品質を超えた何か)
と書かれていました。ブランドとは、”顧客の心の中に存在する、品質を超えたポジティブなイメージ”と考えるとよさそうです。
ブランド作りとは?
そうすると、ブランド作りとは、”顧客の心の中に、品質を超えたポジティブなイメージを形成し、顧客との感情的なつながりをつくる”ことになります。
顧客との感情的なつながり、つまり、絆をどう深めていくか?がブランド作りには重要です。
強いブランド作り
弱いブランドや普通ブランドを作るよりは、強いブランドを作りたいところです。
ちなみに、強いブランドにはどのような効果があるでしょうか?以下の4つが挙げられます。
- 数量プレミアム効果:品質が他社と同じでも売れやすい
- 価格プレミアム効果:高い価格を設定できる
- リピート効果:何回も購入してもらえる
- 口コミ効果:顧客が顧客を呼んでくれる
岩崎邦彦、小さな会社を強くするブランドづくりの教科書、日本経済新聞社、2013では、経営者・消費者へのアンケート結果を分析し、強いブランドを作るためには、次の2点が決定的に重要だと結論づけています。
- コンセプトが明確で、消費者の心の中に明快なイメージが作られる
- センスやデザインなどによって、消費者の感性に訴えている
さらに、以下が加点ポイントになります。
- 独自のポジションがある
- 低価格で顧客をひきつけていない
- メディアにとりあげられやすい
- 口コミにのりやすい
強いブランド作りの手順

それでは、強いブランドを作る手順をみていきましょう。まずは、どのようなブランドになりたいのか?ブランドのありたい姿を明確にすることが必要です。
そのありたい姿を言葉で表現し、組織内で共有し、実践、つまりお客様へ伝えていく、これが手順となります。
ありたい姿がはっきりする前にロゴや商標を作ってしまうと、後々統一感や一貫性がなくなってしまうかもしれないので、この手順を守ることは大事です。
とはいえ、どうやってブランドのありたい姿を考えたらいいのだ?何か参考になるものは?と悩む人もいるかもしれません。
ブランドのありたい姿を決めるのに必要な3つの条件があります。それは、「価値性」「独自性」「共感性」です。
- 価値性:顧客にとって価値があるかどうか(買い手の視点で考える)
- 独自性:個性があるか、他と違っているか(どこにでもある商品は強いブランドにならない)
- 共感性:顧客が共感し納得するか(お客様から「いいね」がもらえるかどうか)
強いブランドは「心」に訴える
強いブランドは、感情、すなわち「心」に訴えます。ある本で和尚さんが、「物が栄えて、心が滅びる」と言っていたのを思い出します。物質文明が繁栄を極めている現代ですが、今、人々が満たされていないのは「心」です。
強いブランドは、そこに照準を合わせて、顧客との感情的なつながりを作ろうとします。
しかし、感情的なつながりを作ることは簡単ではありません。長さや重さなどは計測できますが、商品をいいと思うか/悪いと思うか、好きか/嫌いかの基準は目に見えず、人それぞれだからです。
そこで、デザインやパッケージの工夫で見栄えする演出が不可欠になりますが、この好き/嫌いという漢字、どちらも女偏がついているので、ここは女性の感性や能力が超重要になるでしょう。
決め手は「知覚品質」
そこで、決め手となるのが、買い手が感じる品質、「知覚品質」です。
知覚品質を高める方法には、以下のようなものがあります。
- 品質を形にする:こだわりのあるパッケージを利用する
- 体験してもらう:畑で収穫した野菜をその場で食べる
- 五感に訴える
- 低価格にしない:安かろう悪かろうと思われないために
- 希少性:期間限定、場所限定、数量限定
- オリジナリティ:個性、独自性がある方が好まれる
- 物語性:ブランドの歴史、生産の苦労や努力などのエピソード
- 社会的証明:コンクール・品評会受賞
売り手と買い手のモノサシは違うので、売り手がいいと思うものではなく、買い手がいいと思うような商品開発が求められます。さらに、単なるモノの消費から、コトの消費となるような+αの工夫ができればなおよいでしょう。
プレミアム価格

強いブランドの価格が高いのには理由があります。セールや値引きもあまり行われません。もちろん、高い品質を確保するためにいい原材料を使っているからという理由もあるでしょうが、「高かろう、良かろう」の心理メカニズムが働くこともその理由の一つです。
人には、価格が高いものを飲んだり食べたりしたとき、価格が安いものよりもおいしく感じる、無意識につじつま合わせをする心の作用が働きます。つまり、価格には、知覚品質を変える力があるということです。
強いブランド→プレミアム価格→知覚品質向上→ブランド力強化…という好循環が発生すると、ブランド力はますます強固になり、他社との価格競争に巻き込まれることがなくなります。
そうなると、収益が安定しますね。
価格の安さを最重要視する消費者はたしかにいますが、価格で惹きつけた消費者は、他に安いものがあればそちらに逃げます。安い価格を設定して薄利多売するよりも、ある程度高い価格を設定して、それでも買ってくれる顧客を大事にする方が、経営的には正しいのかもしれません。
ブランド作りが失敗する10の理由
ここまで、ブランドやブランド作りとは何か?強いブランドを作る方法について書いてきました。これらを踏まえて、最後にブランド作りが失敗する条件についてみていきましょう。
ブランドが失敗する10の理由
- 品質が悪い:ブランドどうこう以前の問題
- 戦略がない:明確な方向性なしにブランドは作れない
- 共感性の欠如:消費者の期待やイメージに背く
- コミュニケーションに一貫性がない:消費者の心に明確なイメージが育たない
- むやみにブランドを広げる:ブランド価値は希釈化する
- なんでも屋になる:焦点がぼける
- 消費者の声を聴かない:双方向のコミュニケーションが必要
- 値引き競争をする:価格の安さを売りにしない
- 感性に訴えない:機能や価格だけで勝負しない
- 動きがない:生き残りをかけて進化を続ける
ここに書かれていることが一つでも当てはまってしまうと、ブランド作りはうまくいきません。
以上を参考に、人間の創造力と想像力を発揮して世の中を盛り上げていきたいですね!


