月が農業に与える影響:中南米農民のオーガニック農法の知恵

月の満ち欠けは農業に影響を与えると言われていますが、どんなものがあるでしょうか?月と農業 LALUNA 中南米農民の有機農法と暮らしの技術という本には、古代からの知恵や経験が満載です。いくつか重要事項をピックアップして紹介していきます。

「穀物を、(略)味を落とさず長もちさせ、病気や害虫の被害も受けにくくするには、下弦の月のときに収穫することである(65頁)。」

「(カンキツ)のせん定を行うのによい月齢は、新月である。このタイミングで行えば極端な徒長枝の発生も防ぐことができ…(73頁)」

ハイロ・レストレポ・リベラ,月と農業 LA LUNA 中南米農民の有機農法と暮らしの技術,農文協,2010

月光の影響

月の光は人間の感情や精神に影響を与えると言われています。満月の時に興奮や不安が高まるという経験は、誰しも持っているかもしれません。

それが、どうも動物だけでなく植物にも影響を与えることが古くから分かっていたらしく、種子の発芽にも影響を与えることが分かっていました。

月のやわらかい光は太陽の強い日ざしより何倍も深く地中に射し込むため、その光子が発芽を促し植物を丈夫に育てる役割を果たします。

逆に、月光がほとんどゼロの状態で育つと、根の発育が促進されます。

種まきや移植時期と月齢の関係

トマトやトウモロコシなど地上に育つ野菜の種まきは、月が膨らんでいく期間(新月から3日目~満月の3日前まで)に行います。なぜなら、この期間は水分が地上に拡散する時期だからです。

これは潮の満ち引きをイメージするとわかりやすいと思います。

満月の時は月の引力が強くなる分、地上部に水分が集中し、逆に新月の時は月の引力が弱くなる分、地下部に水分が集中します。

従って、十八夜(満月の3日後)~新月の最初の3日間までは、大根やニンジンなど地下に育つ野菜の種まきを行うとよく育ちます。

ここで注意すべきなのは、ホウレンソウやキャベツ、レタスなどの葉野菜です。これらの種まきは二十六夜に行います。三日月で種まきをしてしまうと、上部の生長が促進され、早くとう立ちしてしまうからです。

種子や苗木の生育初期段階に月光が当たるようにすると、葉や花が勢いよく育つので、覚えておくとよいでしょう。

果菜、子実野菜、豆類の収穫時期

生食用

満月の前後3日間、計6日間は水分が地上部へ集中するため、果実や豆類、トウモロコシ等が最もジューシーになるとともに、食味が最もよくなります。

保存用

塩漬け、酢漬けする野菜の収穫は、葉や茎の部分を保存する場合には水分が最小となる二十六夜に収穫するのがベストです。

シロップ漬けする野菜の収穫は、水分が地上に集中する満月の前後3日間に行うほうがジューシーになり、糖度も上がります。

一方、干しブドウなど乾燥させる場合は、水分が地下部に集中する下弦の月から新月にかけて収穫します。

ウリ科野菜の種まきと収穫時期

キュウリやカボチャ、スイカなどのウリ科野菜の種まきは、水分が地上部に拡散する新月の3日後から満月の3日後までに行うとよく生長します。

収穫時期に関しては、その野菜の取り扱い方によって変わってきます。産直販売など運搬距離が短く消費者にすぐ届けられる場合は、満月の前後3日間、計6日間の間に収穫すると、ジューシーで食味もよい野菜を提供できます。

一方、消費者に届けられるまでに時間がかかる場合は、水分が地下部に集中する下弦の月から新月までに収穫すると、傷みにくい野菜を提供することができます。

穀物の収穫時期

日本の穀物と言えば、やっぱりお米でしょう。近年はコンバインを使って稲刈りと脱穀を同時に行い、乾燥機を使って一晩でお米を乾燥させる米農家さんが多いですが、昔はお米を収穫後、稲架掛け(はさがけ)をして天日干しし、乾燥させていました。

そうすることで保存に適した水分量まで乾燥させると同時に、食味もよくなりました。

乾燥は虫や病気の被害を受けにくくし、穀物の食味を落とさず長期保存するために必要不可欠なので、収穫時期は水分が地下部に拡散する十八夜から新月の初めの3日間の間に収穫します。

このグループにはゴマ、麦、大豆、落花生などが含まれます。

特にゴマは精油したときに良質となるとされているため、高品質なゴマ油を採るためにも重要な知恵ですね。

塊茎、球根、根茎の収穫時期

大根、ニンジン、ジャガイモ、ショウガなどがこのグループになりますが、これらの野菜も収穫後の用途によって収穫時期が変わります。

貯蔵・保存しないですぐに食べるときは、水分が地下部に拡散・集中する新月の時期に収穫するとジューシーで調理したときに最もおいしくなります。

この時期に最も栄養価が高まるという人たちもいらっしゃいます。

長期保存や種子採りをするときは、水分が少ない時期が適しているので、水分が地上部に集中する満月の前後6日間がベストです。

本書ではキャサバの事例が紹介されていますが、挿し木を植え付ける時期は、根の形成が旺盛になる新月の時期に行うと根の活着がよくなります。

カンキツ類の栽培と月齢の関係

竜王じねんの庭でもレモンやユズを栽培していますので、これらの知恵を活用しています。

種子の採取

種子採り用の果実を収穫するのは、二十六夜が最適とされていますが、未熟な果実ではなく完熟した果実を収穫することが大事です。

発芽処理

水分が地上部に集中し始める三日月の月齢期に、5%程度に薄めた液肥に種子を浸すと、その処理をしなかった場合と比べて発芽率や発芽後の生育も良好になります。

接ぎ木

接ぎ木は、水分が地上部に集中する三日月から満月にかけて行います。

定植

定植は、水分が地下部に集中する時期がいいと思いきや、水分が地上に集中し始める三日月から満月の時期に行うのが良いようです。

定植の時間帯は、午後の夕暮れ前が移植におけるダメージが少なくその後の月光の影響をすぐに受けられるのでよいとされています。

整枝・せん定

せん定作業を行うのは、水分が地下部に集中する新月の前後3日間頃が適しています。この時期にせん定すると、徒長枝やいらない枝があちこちにできないようになります。

果実の収穫

ウリ科の野菜の収穫時期と基本的に同じ考え方です。すなわち、収穫後生ですぐ食べるのであれば水分が上部に集中する満月前後がよく、消費されるのに時間を要する場合は、水分が下部に集中する新月前後が適しています。

そうすることによって運搬の負担を軽減したり、水分の蒸発を防ぐことができます。

苗木管理と月齢の関係

材木・果樹用苗木

苗床で種子を発芽させる場合、全ての作業は水分が地上部に集中する時期である三日月から満月の時期に行います。移植や鉢植えも同じ時期が良く、その時期に作業を行うことによって植物の生長を促すことができます。

挿し木や挿し穂は、根の形成が旺盛になる新月の時期に行います。

野菜苗

レタスやキャベツ、ホウレンソウなど葉を食用とする野菜は、水分が下部に集中する時期に栽培をスタートします。

一方、トマトやブロッコリーなど実や花を食用とする野菜は、水分が上部に集中する時期に栽培をスタートします。

根菜類を苗床で育てる機会はあまりありませんが、何か作業をする場合は、水分が下部に集中する下弦の月のときが良いとされています。

肥効と月齢の関係

植物の生長に合わせてぼかし肥や液肥、アミノ酸肥料などの肥料を与えますが、用いる材料と植物の種類によって最適な散布時期が異なります。

有機質肥料

鶏ふん、牛ふん、たい肥などを施肥する時期は、植物の根の張り方によって変わります。深く根を張る深根型の植物への施肥は、二十六夜から新月にかけて行うと栄養分がよく吸収されます。

浅く根を張る浅根型の植物は、三日月から満月にかけて施肥すると、肥効が上がります。

生物肥料(葉からなる肥料、液肥)

葉を主成分とする生物肥料は、三日月から満月にかけて施肥すると最も肥効が高まります。特に満月の時期は、すべてにおいて効果が高まる時期とされ、液肥の葉面散布にも適しています。

最後に

本書では、これらの知恵のほか、月の成り立ちや月齢が海に与える影響、星座と月齢の関係などが豊富な絵や表とともに紹介されています。是非ご一読いただくことをお勧めします。

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