木炭とはまた違った魅力がある「竹炭」について

竹は木材に比べて全国どこでも入手ができ、加工や調整が簡単に行えます。竹の成長スピードは目を見張るものがあり、中には1日に1m以上伸びるものもあります。
その秘訣は、節ごとに成長点があり細胞分裂をすることで一気に伸びること、地下に貯蔵した栄養分を利用して成長することにあります。
竹は木材よりも空隙が多いため、木材よりも簡単に炭化させることができます。竹炭・竹酢液には木炭・木酢液とはまた違った特性や使い道があります。それはいったいどのようなものでしょうか?
竹炭は多孔質で木炭と同じように強力な吸着性を発揮する。電気特性・微生物反応機能のほか、珪酸・カリウムなどのミネラル補給機能など、独自のすぐれた特性をそなえている。現代の科学ではまだ解明できない不思議なヒーリング(心身の癒し)作用も実体験によって認知されている。農地の土壌改良や作物の生長促進、人間や家畜の健康増進などにも大きな役割をはたしている。
池嶋庸元, 竹炭・竹酢液のつくり方と使い方-農業・生活に竹のパワーを生かすー, 農文協, 1999

記事の目次
竹炭の効果
土壌改良
竹炭は木炭よりも隙間が多く、水や空気を通しやすいため、土に混ぜると通気性や保水性がよくなります。また、土中で発生するアンモニアガスを固定する働きもあります。
竹炭の孔の表面には糸状菌、放線菌、バクテリアなど植物にとって有用な微生物が集まるため、農作物が育ちやすい環境になります。その分農薬や化学肥料の使用量を減らすことができます。
たい肥化期間短縮
作物残渣や落ち葉、草木を用いてたい肥を製造する際、発酵温度が急上昇し、時には80度以上になることがあります。温度が高すぎると微生物が死滅してしまうため、通常50~60度程度になるように切り返しをしなければなりません。
しかし、竹炭を混ぜることによって分解ガスが吸着され、切り返しが不要になるメリットがあります。
連作障害の回避
竹炭には、カルシウム、カリウム、窒素、リン酸、マグネシウム、マンガン、鉄、亜鉛、銅、ホウ素、モリブテンなど作物の生長に必要なミネラルがバランスよく作物が吸収しやすい形で含まれています。
特にハウス栽培ではミネラル不足によって連作障害が起きやすいと言われていますが、竹炭を使うことによってミネラルが補給できるので、連作障害の影響を回避することができます。
増収・品質向上
栽培時に竹炭の粉炭を使うことによって、トマトやメロンの風味向上、イチゴやネギの増収、エンドウの根粒菌増加などの効果が得られています。使用量の目安は10アールあたり約400㎏と言われています。
10倍に薄めた竹酢液を用いることによって、より一層効果が上がるとの報告もあります。
野菜・果物の鮮度保持
収穫後の生鮮野菜や果物からは、エチレンガスが発生します。このガスは野菜や果物を熟成・老化させる効果があるため、エチレンガスを除去すると収穫物が長持ちします。
吸着性の優れた竹炭を置くことによってエチレンガスの他、悪臭のもとになるアンモニア、トリメチルアルミン、エチルメルカプタンといったガスまで吸着されます。
炭はアルカリ性なので、使用後の食用油に指くらいの炭を一本入れておくだけで、油の酸化を防ぐこともできます。
土のpH値調整
酸性雨によって枯死しかけた樹木を粉炭によって回復させた事例があります。アルカリ性の炭は酸性雨対策にも有効です。
竹酢液の効果
土壌改良
竹炭と同様に、竹酢液も土壌を改良する効果があります。いろいろな成分を含んだ竹酢液は、殺菌・殺虫効果もあれば、土中の有用微生物を増やす効果もあります。また、作物の発根や生長を促進させる働きもします。
竹炭はアルカリ性なので、単独で使用すると一時的に作物の根が伸びにくくなることがありますが、酸性の竹酢液を併用することによってその問題を解消することができます。
たい肥化促進
たい肥化材料に50~300倍に薄めた竹酢液を散布することによって、微生物の増殖が促され発酵が促進します。
アンモニアガスの発散を防ぎ、悪臭成分を中和・分解することもできます。たい肥の悪臭を減らすには、2~300倍に薄めた竹酢液の散布回数を増やすとよいでしょう。
生長促進
適切な濃度に薄めた竹酢液は、作物の発根や発芽を促すホルモンのような性質があることが確かめられています。作物の生長を促進させる場合は、2~500倍に薄めたものがよく利用されます。
濃度が濃すぎると害虫忌避効果が現れますが、作物にとって悪影響になることには注意が必要です。
減農薬・無農薬
竹酢液は酢酸を主成分とする酸性の液体であり、いろいろな成分を溶かし込む性質があります。そのため、農薬を竹酢液に溶かして使用することで、農薬の薬効成分がよく溶け作物の組織の内部までよく浸透するようになります。
その結果、農薬の使用量を削減することができます。
薬草のドクダミ、ニンニク、トウガラシなどを竹酢液の中に入れてそのエキスを抽出し、ダニなどの防除効果を狙った使い方もよく行われています。
虫獣忌避
竹酢液には独特のこげくさい刺激臭があり、虫類や小動物を避ける効果があることが古くから知られています。忌避用に使う場合は、精製する必要がなく、粗竹酢液をそのまま使うことができます。
最後に
木炭を炭窯を使って製造する場合は、豊富な経験と長い歳月を必要としますが、構造が中空で炭化しやすい竹は、誰でも簡単に炭化させることができます。
その際、炭化装置にパイプを接続することによって、竹酢液も収集することができます。
竹炭と竹酢液の効果は目を見張るものがあり、有機無農薬栽培を行う際にも大きな助けとなってくれます。
竹酢液は濃度によって効果が異なるため使い方に注意が必要ですが、材料も簡単に(しかもほぼタダで)調達できるので、使わない手はないでしょう。

